私立言実ヶ丘女学院(ことみがおかじょがくいん)には、とある学院七不思議(※1)がある。
部室棟(ぶしつとう)の四階にある右から数えて、四番目にある『あかずの部室』。
十年以上も前から使われていない部室で、何かしらの事件が起こった後、その部室での幽霊の目撃談が絶えなかった事から使用不可となったと噂されている。
今年、そんな女学院の中等部に入学した稲荷原流香(いなはら るか)がリーダーを務める『言実怪異バスターズ(※2)』に依頼が持ち込まれる。
『部室棟のあかずの部室、あの部室を使えるようにして欲しいんです』
依頼者は、猫目沢茜(ねこめざわ あかね)という流香同様新入生であった。
稲荷原流香が好きで止まない姉の稲荷原瑠羽に自分がいかに優れているのか。
あかずの部室を解決する事で分かってもらえるのではないかと考えた流香は猫目沢茜の依頼を引き受ける。
そして、あかずの部室の怪異を解き明かすべく調査し始めた稲荷原流香達が行き着いたのは、あかずの部室があかずの部室たり得た、小さな小さな事件であった……
※1 学院七不思議言実ヶ丘女学院には七不思議と言いながらも、八つの怪談がある。
その一『徘徊少女霊』
その二『とある黒板』
その三『鏡の中の魔女』
その四『秀才の机』
その五『階段の足』
その六『校庭のランナー』
その七『13階段』
その八『部室棟(ぶしつとう)の開かずの部室』
※2 言実怪異バスターズ(ことみかいいばすたーず)
稲荷原流香が小学生5年生の頃に、妖怪くだんの予言から抗うべく結成した怪異討伐チーム。
今は、稲荷原流香(いなりはらるか)、彩音緑(あやね みどり)、古式来璃(こしき くるり)の3人のメンバーからなる。
最盛期には、5人のメンバーがいた。